ABOUT 講座紹介
教授ご挨拶
目の前の患者さんのアンメットニーズに応える質の高い地域医療と、世界の精神医学界をリードする研究の両立
~Think globally, act locallyの実践~
~Think globally, act locallyの実践~
精神科の診察や治療の対象となる精神疾患の患者さんの数は非常に多く、実はあらゆる診療科の中で最も患者さんが多い科の一つです。また、精神疾患は全体の4分の3の方が20代前半までに発症します。成長過程や生産年齢そして人生そのものに大きく影響することが多い精神疾患にかかることで、患者さんご自身やご家族などの周囲の方が日常生活において受ける影響も非常に大きいものです。患者さんも多く生活への影響も大きいため、社会全体にとっても精神疾患に関する問題は非常に重要です。しかし、その重要性の反面、日本では精神疾患や精神医療の重要性が軽視され偏見が持たれやすい風潮がありました。現在はそうした風潮も大幅に改善されてきていますが、それでもまだ精神科にかかることに必要以上に不安や抵抗を感じられている方も少なくないのではないかと思います。
一方、この数十年来、精神科領域における診断方法や治療方法は改良が重ねられ、現在の精神医学によって多くの患者さんが適切に診断され、適切な治療によって大幅に改善を得られ、日常生活や社会生活の向上が得られています。浜松医科大学附属病院精神科神経科は、通常の薬物療法や精神療法に加えて、難治性のうつ病や統合失調症に対するクロザピン治療や電気けいれん療法や身体的な管理を必要とする摂食障害の専門的治療から、森田療法や認知行動療法や眼球運動による脱感作と再処理法などの専門的な心理療法まで、非常に幅の広い診断法や治療法を駆使して、小児期から老年期までの幅広い年齢層の症例に対応しているという特色があります。当講座は、浜松医科大学附属病院精神科神経科での臨床を中心に、現在30を超える豊富な関連病院と連携して、現在利用可能な知見を最新のものまで最大限に活用して患者さんやご家族の問題を解決する質の高い医療の提供、あるいはそれをできる医療人を育成するという、地域医療の維持・発展を使命としています。
一方で、精神医学はまだまだ発展途上の学問でもあります。そのため、現在の精神医学で適切に診断することが難しい、あるいは適切に治療することが難しい患者さんも少なからずいらっしゃることも現実です。当講座では、目の前の患者さんの「治らない」「分からない」問題を「治せる」「分かる」問題にするための質の高い地域医療の実践と人材育成に加えて、今の医学ではどうしても解決できない世界中の患者さんに共通する問題を将来解決できるようにするための研究を行っています。すなわち、MRI(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴画像)やPET(Positron Emission Tomography:ポジトロン断層法)などのマルチモダリティ脳機能・分子イメージングを使った精神症状の脳内分子メカニズムの研究や、社会的コミュニケーションの障害に対するオキシトシン経鼻剤のような現在の医学では治療不可能だった症状への治療薬の有効性を検討する自主臨床試験や医師主導治験にも力を入れており、国内外で高く評価される臨床研究の実績を挙げてきたという点も特色です。
最新の医学的知見を取り入れた診断・治療法を提供すること、そして研究を進めて最新の医学的知見そのものを増やすことで、より安心して受診していただける診療科づくりを進めています。そして、患者さんのアンメットニーズを解消するという普遍的な最終目標について、職種や経験年数を問わずに講座のメンバー全員が共有して、共通の最終目標に向かって自由に伸び伸びとそれぞれの特長を発揮して活躍できる講座づくりを行っています。
精神医学講座 教授/精神科神経科 診療科長
山末 英典
山末 英典