座談会
浜松医科大学の精神医学講座で精神科医への道を歩む、若手の医局員たち。
彼らはどんな思いで入局を決め、どのようにして理想の精神科医を目指しているのか。
講座に所属することの魅力や将来の目標をざっくばらんに語り合ってもらいました。
彼らはどんな思いで入局を決め、どのようにして理想の精神科医を目指しているのか。
講座に所属することの魅力や将来の目標をざっくばらんに語り合ってもらいました。
座談会メンバー
専門医研修の場を浜松医科大学精神科に決めた理由
-皆さんは、最初から医局に入ることを決めていましたか?
決めていましたね。
私もです。ちょうど専門医システムの移行期だったので、当初から大学病院の医局に入局しようと思っていました。
私は県内の精神科専門医プログラムの中で検討していました。
僕はむしろ、最初は市中病院の精神科プログラムに入ろうと思っていたんですよ。でも、それぞれ見学した上で大学病院に決めました。市中病院はいつでも働けるし、大学病院と比較すると、やっぱり築ける人脈やアクセスできる情報に圧倒的な差があったからです。
-浜松医科大学の精神科に決めた理由は?
私は生まれが県内なので最初から選択肢には入れていましたが、出身大学の医局に入るか最後まで悩みました。でも、浜松医科大学の講座って「他大学welcome」な雰囲気があるじゃないですか? それは当時も同じで入りやすそうだなと感じたことと、精神科1年目は大学病院でグループ制の下に教育するシステムなので、基礎がしっかり身に付くと思ったんです。
教授の人柄の影響もあるのか、雰囲気や医局内の風通しの良さは、精神科の特長ですよね。
今も昔も、穏やかな先生が多いですよね。そんな先輩方の指導を受けながら複数の病院で働く機会を持てるというのは、精神科医としての成長につながるという確信がありました。
私はもともとどこかに入局することは決めていて、小児科や地域医療で精神的不調の早期介入に努めることも考えていたんです。ただ、当時から児童精神医学領域に注目していたのですが、浜松医科大学はこの分野で非常に先進的で、それが決め手になりました。地元を生涯のフィールドにしたいので、出身大学ではなく出生地の大学を選んだ、という理由もあります。
僕は、多くの上級医が身近にいるという点も魅力に感じました。1つの事象に対してさまざまな意見を伺えますし、さまざまな専門を持った精神科医が、研究や勉強会を通してブラッシュアップした知見にも触れられる。治療について裁量の幅が大きい精神科だからこそ、精神科医としてのスタートはこうした環境が必要だと考えたんです。
研修の振り返りと、講座の雰囲気について
-入局の前後で、受けた印象に違いはありましたか?
なかったですね。
むしろ、思った以上に同期や上司と仲良くなれて、研修ってこんな楽しかったんだというギャップを感じたくらい(笑)。
研修では上級医を交えて小グループで診療するのですが、1年目の自分も意見を言いやすくしてもらったのがとても印象に残っています。的外れなことも言っていたと思うのですが、それを否定するだけじゃなくちゃんと意見をいただけるので、理解が深まるんですよね。自分自身でも気付かなかった癖を自覚できたりと、あっという間の充実した1年間でした。
-研修を振り返って、成長につながったと感じるのは?
先輩が後輩の先生になる屋根瓦式教育で、独自路線に走ることなく一般的な精神科知識を学ぶことができたのが大きかったですね。また、毎週の教授回診でEBMに基づく思考が身に付きました。
大学病院で基礎を学び、病院勤務で実践を学ぶという流れができていますよね。その上で、どんな些細なことでも聞きやすい講座の雰囲気があるから、楽しく成長できる。
-皆さんのお話からとてもアットホームな講座の雰囲気が伝わってきますが、上司や先輩の存在から得られたものは何ですか?
困ったときは報・連・相。仲間を頼ること、頼られることの大切さかな。
講座の先輩には、精神科医としてどう振る舞うべきか、患者との関わりの中で自分の気持ちをどう整理するかといった仕事上の教えから、ライフステージの変化にどう対応するかなど、人生の先輩としてのアドバイスもたくさんいただいた気がします。
精神科医としての診療の基本を指導していただいたことが、今、市中病院でさまざまな患者さんを診療する上での指標となっていますね。
仕事以外の話をすることも多くて、学んだことはたくさんありますね。
講座に戻れば仲間がいるというのは、いつだって心強い。診療で迷ったときに頼りになるのはやっぱり講座の先輩だし、勤務上どうしてもストレスに感じることがあったとき、何でも吐き出せるのは同僚や年の近い仲間たち。資格の取得も、情報共有しながら一緒に頑張れる仲間の有無って、大きいと思うんですよ。
年の近い同僚の存在は大切ですよね。上司に聞きにくい些細な疑問や、仕事のちょっとした愚痴は、やっぱり同僚じゃないと。
私は講座に入っていなければ、こんなに頼れる仲間は得られなかったかもしれません。大学院など学術の世界への窓口としても、講座の存在はかけがえのないものだと感じています。
-一方で、改善したいと感じていることもあるのでは?
(大学の各科持ち回りの)当直の頻度かなあ。
数は多いですよね。ただ、精神科当直はなくなっていく方針だと聞いていますけれど……。
ワーク・ライフ・バランスという観点では、精神科はグループ制で診療しているのでお休みも取りやすいし、お子さんの発熱など急な家族対応が必要なときも誰かが代わりを務められる体制になっているので、結構充実していると感じています。
2年目以降の病院によって受けられるサポートに差が出てしまっているので、専門医、指定医を取るまでは統一したサポート体制を作って、専門医や指定医試験を受験しやすくできたらいいですね。
-ちなみに、講座の皆さんとはオフタイムでも交流はありますか?
仕事にからめて連絡して、時々飲みに行ったり。
食事も結構一緒に行ってましたよね。
あとは旅行したりとか。
残念なことに、僕はコロナ禍での入局であんまりそういった機会に恵まれてこなかったので、やっと落ち着いてきたこれからが楽しみです。
将来の目標
-皆さんの目標を教えてください。
精神科医は精神保健指定医の資格がないと一人では働けないので、まずはこの資格を取ること。そして来年度から市中病院へ出るので、一人で診療していくことに慣れることです。大学病院ではグループ制の診療体制で、常に上級医がそばにいました。守ってもらっていた部分も多かったので、ある程度独り立ちすることが当面の目標です。
私は、研究~臨床~行政を行き来する存在になって、相互に力を合わせられるようにしたいという夢があります。その夢に向かって、指定医取得、専門医取得、博士号取得、子どものこころ専門医取得という目標を、ステップバイステップで達成していきたいです。
子どもからお年寄りまで、幅広い疾患に対応できる精神科医になることです。そのためには児童思春期の疾患や、成人のマイナーな疾患、治療抵抗性の症例などに対応できる必要があるので、これからも自身のみでは気付かない視点から講座の先輩に指導・助言をいただきながら、知識・経験を蓄えていきたいですね。
私の目標というか夢は、精神科医として働き続けながら、どんな患者さんにも真摯に向き合い続けること。自分の課題としてメンタルとフィジカルの強化や知識のアップデート、そしてもう少しアカデミックにいろいろ考えられるようにならなければと感じていますので、積極的に講座の勉強会に参加して先輩たちに恥じない精神科医を目指します。
当講座に興味のある方へ
-最後に、当講座や医局に興味を持っている方に伝えたいことはありますか?
大学病院に少しでも興味があるなら、ぜひ入局を検討してみてください。長い医師人生を思えば、最初の1年だけでも大学病院で働くことは、働く場所や、専門性等の選択肢を広げる意味でとてもメリットがあると思います。それにもし職場がどうしても合わなかったり不安があった場合、調整やサポートが受けられるのも医局の強みです。
大学病院は学術の世界への窓口です。どの道に進むとしても、大学病院でのアカデミックな経験は決して無駄にはなりません。そして現実的な話をすると、今、静岡県全体で精神科医が不足しており、どこに行っても歓迎される状態です。教授をはじめ、気さくな先生が揃った当講座で、期待される精神科医への道を一緒に歩みましょう!
医局に入局するか、どの大学を選ぶかなど、悩みは尽きないと思います。そんなときは、いったん自身の将来のビジョンに立ち戻り、それをかなえるためにはどこに属するのがいいのかを考えて、ベストな選択をしていただけたらと思います。その上で当講座を選んでもらえたらうれしいですね。
入局した当初は、精神医学に関して右も左もわからない状態でした。でも入局してからの4年間で、学術的なことから医師個人の経験によることまで、多くの先輩方からたくさんのご指導をいただき、ここまでやってこられました。それも入局したからこそだと思っています。当講座は働きやすく、何よりも精神科診療を楽しく行うことができる職場です。一緒に働く先生方が増えてくれるとうれしいです。